東京高等裁判所 昭和28年(く)99号 決定
(一) 検察官の本件刑執行猶予言渡取消請求書には、「抗告人が昭和二八年六月一五日静岡地方裁判所に於て暴力行為等処罰に関する法律違反罪に因り懲役一年六月に処せられ三年間刑執行猶予の言渡を受けたるものなるが、右猶予刑言渡前である昭和二八年一月一七日傷害暴行罪に因り静岡地方裁判所吉原支部に於て懲役八月に処せられたる事実が発覚したので前記執行猶予の言渡を取消相成度請求する」とあつて、右の「昭和二八年一月一七日」が傷害暴行罪による懲役八月の判決言渡の日であるか或は判決確定の日であるか判然しないので、検察官の本件取消請求は静岡地方裁判所が抗告人の受けた昭和二八年一月一七日確定の懲役八月の実刑判決を知らずして同年六月一五日前記執行猶予の言渡をしたところ、その後に至り右実刑の確定判決あることが発覚したこと(刑法第二六条第三号)を理由とするものであるか、或は同年一月一七日言渡を受けた懲役八月の実刑判決が前記執行猶予の判決確定(同年六月三〇日)の後に確定し、その事実が発覚したこと(刑法第二六条第二号)を理由とするものであるかは必ずしも明確ではなく、右取消請求書を通読するときは一応前者の刑法第二六条第三号によるものの様に思われるのであるが、検察官から同時に提出された昭和二八年一月一七日言渡の懲役八月の実刑判決の抄本、同事件に関する東京高等裁判所同年五月二五日言渡の控訴判決の抄本、同年八月二九日附検察事務官作成にかかる抗告人の前科調書等の疎明書類によるときは、抗告人は昭和二八年一月一七日静岡地方裁判所吉原支部で傷害罪により懲役八月の判決言渡を受け、東京高等裁判所で抗告人申立の控訴が棄却せられ、更に抗告人から上告を申立てたが、その取下により右実刑判決が前記執行猶予の判決確定の日(同年六月三〇日)の後である同年七月四日確定したことが認められるから、検察官は之を理由として刑法第二六条第二号に基いて本件執行猶予の取消を求めたものであることを推認することができる。加之本件においては、右の様に刑法第二六条第二号による請求も、同条第三号による請求も、結局は同一法条に基き、且基本的事実関係を同じくする執行猶予の取消請求であるから、仮に検察官が誤つて刑法第二六条第三号による請求をなしたものとするも、之を同条第二号にあたるものとして容認することは毫も違法ではない。